「製造単価が安いこと」
と
「最終的な生産コスト
が安いこと」は、
必ずしも同じではない
アパレル生産において
「コストを抑えたい」
という要望は自然な経営判断です。
特に100枚、300枚、500枚と
生産数量が増えてくれば、
1枚あたり数百円の違いが
最終的には大きな金額になります。
一方で、
私たちが長くアパレルOEMの現場に
携わってきて感じるのは、
「製造単価が安いこと」
と
「最終的な生産コストが安いこと」
は、必ずしも同じではない
ということです。
今回は、実際の生産現場で起こり得る
「ミシン油や汚れによる不良」を例に、
価格を優先した工場を利用する際に
知っておきたい品質管理と
ロス率についてお話しします。

※本記事は、過去の複数の生産事例をもとに構成したケーススタディです。工場や生産国によって品質管理体制は異なります。
この記事でお伝えしたいこと
コスト優先工場における不良発生は
「工場の怠慢」ではなく、
清掃体制や設備投資が削られている
という構造的な必然です。
価格を抑えた工場を利用すること自体が
悪いわけではありません。
大切なのは、
「安い工場を使うか、高い工場を使うか」
ではなく、
価格に応じてどのようなリスクがあり、
それをどの工程で管理するか。
ここまで含めて生産計画を立てることです。
1. 中国生産・価格訴求型工場
で起きる典型例
春先の大型イベントに向けた
羽織りものを総数300枚規模で
中国生産した際の事例です。
最終出荷前の検品段階で
納品予定の製品の内1割強におよび
濃い油染み・汚れが
発覚したケースを例に解説します。
縫製工場ではミシンを使用するため、
設備の状態やメンテナンス状況によって、
ミシン油が製品に付着することがあります。

もちろん、
すべての中国工場や価格を抑えた工場で
このような問題が
起こるわけではありません。
ただ、製造コストを抑えるためには、
どこかの工程を効率化する必要があります。
清掃、設備メンテナンス、
工程途中の検品などに
かけられる人員や時間が、
高価格帯の工場と
まったく同じとは限りません。
今回は生産する製品が
配布用ということもあり
なるべく安価での
製造の希望をいただいており
価格を抑えた工場での
生産進行となりました。
結果、最終検品の段階で
1割強の油染み・汚れが確認されました。
油染みについては
専用の溶剤で除去できる場合があります。
しかし、溶剤の化学反応によって
色抜けや輪ジミなど
生地の色が変色するリスクが生じます。
今回生産した製品でも
実際に一部で変色が確認されたため
無理に修正を続けるのではなく、
基準を満たさないB品(不良)として
不足分について
再生産を行う判断をしました。
しかし難しかったのが納期です。
3月上旬開催のイベントに
合わせた納期であり、
中国の旧正月(春節)による
工場の長期休業が直前に迫る
極限のスケジュールでした。

ミシン油や作業台の汚れが付着した状態。
専用溶剤での除去を試みる場合もありますが、
生地の変色・色抜けリスクを伴うため、水際検品での
厳格な仕分けと再生産判断が重要になります。
2. なぜ価格を抑えた工場では
品質差が出ることがあるのか
「工場のモラルが低いから」
という感情論は
生産管理の実務において
無意味です。
ここで誤解していただきたくないのは、
「安い工場=悪い工場」
ということではありません。
私たちも商品の用途や予算に応じて、
さまざまな価格帯の
協力工場を利用しています。
価格には理由があります。
汚れが発生するにも理由があります。
- ミシンなどの設備メンテナンス頻度
低コスト工場では、高速稼働するミシンへの
注油管理が作業者任せになりやすく、過剰な
オイルが針棒や送り歯から生地へ飛散します。
- 作業台や縫製現場の清掃体制
人件費を削るため、作業台や床面の
定期清掃フローが省かれ、裁断物や半製品の
移動時に周囲の汚れを吸着します。
- 縫製途中で行う中間検品省略による波及
縫製ライン内でのインライン検品を行わず、
最後のまとめ検品のみに頼るため、1箇所で
発生した油飛びがロット全体に広がります。
- 不良が発生した際の修正体制
油染み落とし用の強力な溶剤は染料を侵す
リスクがあり、油は落ちても
「色抜け・輪ジミ・変色」を引き起こすため、
安易な現場修正は製品寿命を縮めます。
などです。
こうした工程を細かく設定すれば、
当然ながら
人件費と管理コストが発生します。
逆に価格を抑える場合は、
商品の用途に応じて
工程を簡略化することもあります。
だからこそOEM会社には、
「この商品には、
どこまでの品質管理が必要なのか」
を判断する役割があります。

3.単価と総額の
比較シミュレーション
より高い仕上がり品質を求める場合、
裁断前の生地検査や
縫製工程中の「中間検品」を
複数回差し込むことで、不良の発生を
未然に防ぐことは十分に可能です。
ただし、
検品回数やチェック工程を増やすほど、
作業工数と生地のロス率が上がり、
製品原価(仕入れ単価)に
直接跳ね返ります。
数百枚規模の小ロット生産では
「最初の数十枚で縫い順に
慣れるまでの立ち上がりロス」や
「流通在庫生地のリスク」があるため、
10%〜20%のロス率を
あらかじめ想定して
進めるのが現実的です。
たとえば、
良品を300枚確保したいとします。
以下は考え方を分かりやすくするための
モデルケースです。
| パターン | 想定製造単価 | ロス率想定 | 投入枚数 | 製造総額 | 良品1枚あたりの実質原価 |
| 品質重視(高単価工場) | 3,600円 | 0%(ほぼなし) | 300枚 | 1,080,000円 | 3,600円 |
| 価格重視(10%ロス想定) | 3,000円 | 10% | 334枚 | 1,002,000円 | 約3,340円 |
| 価格重視(20%ロス想定) | 3,000円 | 20% | 375枚 | 1,125,000円 | 約3,750円 |
ロスを含めた原価の考え方を説明するためのモデルです。
- 10%ロスで収まった場合
投入枚数を334枚に増やしても製造総額は
1,002,000円となり、最初から3,600円で作るより
78,000円安く抑えられます。
- 20%ロスまで膨らんだ場合
投入枚数が375枚必要となり製造総額は
1,125,000円となるため、最初から
品質重視工場(3,600円)で作った方が
トータルで安くなります。
つまり、
見るべきなのは見積書に書かれた
「1枚の製造単価」だけではありません。
必要な良品数を確保するために
最終的にいくら必要なのか。
私たちは、こちらの方が事業として
重要な数字だと考えています。
4.小ロット生産だからこそ
「予備」の考え方が重要
- 小ロット(数百枚規模)
専用の反物生産ができず
現物の市場在庫生地を使用するため、
10%前後のロスを見込んだ余剰発注と
事前の単価計算が欠かせません。
- 大量生産(数千枚規模)
生地から専用生産・反物検査(検反)
ができ、工場の縫製ラインも
固定化されるため、ロス率は自然と
1%〜3%程度に収束し
品質が格段に安定します。
数百枚程度のアパレルOEMでは、
市場に流通している在庫生地を
使用することも多くあります。
生地をオリジナルで一から
大量生産する案件とは違い、
生地在庫、裁断、縫製、検品など、
それぞれの工程で一定のロスが
発生する可能性があります。
また、初めて生産するデザインでは、
工場側も量産開始直後から
完全に同じスピード・精度で
縫製できるとは限りません。
そのため、案件によっては
必要数量ぴったりではなく、
一定の予備数を含めて
生産計画を立てることがあります。
どの程度の予備が必要なのかは、
商品・素材・工場・生産数量・
納期・求める検品基準
によって変わります。
「とりあえず10%多く作れば大丈夫」
という単純なものではありません。
ここも、OEM会社と
事前に相談しておきたいポイントです。
5. DESIGNLAB.では、
どこでを事故を止めるのか
品質トラブルで重要なのは、
不良を完全にゼロにすると
約束することではありません。
ものづくりである以上、
どれだけ品質管理を行っても
不良発生の可能性を完全に
ゼロにすることは困難です。
だからこそ私たちは、
問題が起きたときに、
どの工程で発見し、
どの段階で止めるのか
を重要視しています。
DESIGNLAB.では、
価格優先の案件であっても、
お客様とすり合わせた基準にもとづき
日本国内への不良品流通を以下の工程で
物理的に遮断します。
たとえば案件に応じて、
生地手配
↓
必要に応じて裁断前に生地状態を確認
↓
裁断・縫製
↓
縫製工程で設備や作業環境を確認
↓
現地検品
↓
汚れ・縫製不良などを仕分け
↓
日本国内での検品
↓
お客様と設定した基準に沿って
良品・B品を判定
↓
納品
という流れで管理します。
6.どこまでを不良とするか
はブランドによって違う
これはアパレルOEMを
初めて利用される方には、
意外と知られていない
部分かもしれません。
同じ小さなキズや汚れでも、
3,000円で販売するイベント商品と、
30,000円で販売するブランド商品では、
お客様が期待する品質が違います。
天然素材であれば、
ネップや織りムラを素材の特徴として
許容するブランドもあります。
一方、
高価格帯の商品では、
非常に細かな外観差まで
検品対象になることもあります。
つまり、
品質基準には
「その商品にとって適切な水準」
があります。
DESIGNLAB.では、
お客様の販売価格、販売場所、
ターゲット、ブランドの考え方
などを確認しながら、
発注前に検品基準をすり合わせます。

7. 経営損失の可視化:
不良品の本当のコストは、
製造原価だけではありません
仮に油染みのある商品を
そのまま販売してしまった場合、
失うのは
商品1枚分の原価だけではありません。
返品・返金対応、交換商品の配送費、
スタッフの対応時間。
イベント商品であれば、
その場で販売できなかった
機会損失も発生します。
そして何より大きいのが、
ブランドへの信用です。
SNSで商品について
発信される時代だからこそ、
「安く作れたか」だけでなく、
「お客様の手元にどの状態で届くか」
までを製造原価の一部として考える。
私たちは、
その考え方がこれからの商品づくりには
必要だと思っています。
8. 一般的な安価工場と
プロの生産管理の比較
答えは、商品によって違います。
高価格帯の商品だから品質重視の工場。
販売数量が多く、価格競争力が重要なら
コストバランスに優れた海外工場。
短納期なら国内や韓国。
数量がまとまり、
価格を抑えたいなら中国。
このように、
商品の条件によって
最適な生産背景は変わります。
重要なのは
「一番安い工場を探すこと」
ではなく、
「その商品に合った工場を選ぶこと」
です。
DESIGNLAB.では、
国内・韓国・中国などの生産背景から、
商品内容、数量、希望原価、納期、
求める品質に応じて
生産方法をご提案しています。

9. DESIGNLAB.の
生産について
現在、DESIGNLAB.では
継続的な商品展開や、
一定数量以上の量産を予定されている
法人・ブランド様を
中心にご相談を承っております。
目安として、
- 国内・韓国生産:1型50枚〜
- 中国生産:1型100枚〜
- 中国生産については総額50万円〜程度の案件を中心に対応
と設定しております。
「とにかく一番安く作りたい」
というご相談よりも、
販売価格に対して、
どこまで品質を求めるべきか。
この数量なら、国内・韓国・中国の
どこが合理的なのか。
納期を守りながら、
どこまで原価を抑えられるのか。
そうした部分から一緒に考えたい
法人様・ブランド様に、
私たちの生産経験が
お役に立てると思います。
すでに商品販売をされていて、
新しい生産先を検討されている方。
既存商品の原価や品質、
生産体制を一度見直したい方。
100枚、300枚、500枚と、
ある程度まとまった数量での
オリジナル商品生産をご検討でしたら、
まずは現在の商品内容と
数量をお聞かせください。
「安く作る」だけではなく、
最終的に利益の残る商品づくりを。
DESIGNLAB.が、
生産背景の選定から量産・品質管理まで
サポートいたします。







